今回は2,010年代に首・肩。背中の痛みを訴えて来院された70代 男性の臨床例です。
頚椎の靭帯骨化症と病院で診断を受け、医師から手術を勧められました。
しかし、成功率は50%と言われ手術を断った経緯があります。
痛みが強度であったため当院に来院する前に他の鍼灸院に40日毎日通ったそうです。
しかし、痛みは一向に軽くなることはなかったそうです。
そこで、知り合いの方から当院の話を聞いて来院されました。
最初、お会いした時の顔は今でも忘れません。
痛みのストレスなのか顔に精気はなく、目もうつろで「うつ」のような顔つきでした。
このような時は当院の鍼の特徴である接触鍼で施術をする方が得策だと思い、鍼を一切刺さずに治療をしました。
治療法が功を奏したのか初回の治療後、痛みが軽くなったと少し笑顔が見られました。
途中、両手の甲のしびれ、下肢の自発痛・しびれ、ふらつきなど様々な症状が出現しましたが、すべて鍼灸治療でよくなりました。
X年9月20日からX+2年2月3日(途中、7ヶ月間の休止あり)までの治療経過を記しました。
鍼灸治療院たけしたブログ 管理人
(はり師:第 140155 号 きゅう師:第 139966 号)
予診票
初診日
2,010年代 9月20日
性別・年齢
男性 77歳
主訴
首・肩・背中の痛み
現病歴
数年来の痛み
ペインスケール(痛みの度合い)
記載なし
病院での診断
頚椎の靭帯骨化症
その他の症状
腹痛(十二指腸潰瘍)、動悸、耳鳴り
体温・血圧・血糖値
36.3度・129-78・91㎎/dl
薬の服用
降圧剤、胃薬、痛み止め
治療経過
1回目 X年9月20日
肺虚証
はり治療
太淵、太白、足三里、手三里、四トク、左扶突、第4頚椎左椎側、第5頚椎右椎側、第7頚椎椎側、右天リョウ、右上天柱、天宗、肺兪、左督兪、右脾兪、身柱、右飛陽、缺盆、中カン、右梁門、気海
きゅう治療
第7頚椎椎側、右天リョウ、身柱、肺兪、左督兪、
評価
・痛み、軽くなる。
2回目 9月22日
腎虚証
・昨日は痛みを忘れていた。
・前回の治療日の夜は21時に寝た。
3回目 10月3日
腎虚証
・昨日、肩の痛みあり。
・首は柔らかくなり、痛みも軽い。
・右のスネがジンジンする。
追加治療
・後ケイ、陽陵泉。
4回目 10月10日
腎虚証
・おしっこが良く出る。。
・血圧安定。
追加治療
・ヒジュ
5回目 10月15日
腎虚証
・今朝、強度の首・肩痛。
・昨晩、耳鳴り。
・足が冷たい。
・尿の出が悪い。
評価
・首・肩の痛み、かるくなる。
・この日の治療から本人の体調不良により7ヶ月間の休止。
6回目 X+1年 5月8日
腎虚証
・両手の甲のしびれ。
・夜間の尿がうすい。
・手足が冷たく、顔が赤い。
・食欲〇、便通〇、睡眠〇
8回目 5月15日
腎虚証
・両手の甲のしびれあり。
・昨日は痛みは出たが、カートを使わずにイオンを歩けた。
・最近はでん部の痛みを訴える。
評価
・記載なし。
13回目 X+1年 6月19日
腎虚証
・調子よい。
・一昨日は右下肢、昨日は左下肢がこむら返りを起こす。
15回目 7月7日
脾虚証
・昨日、右の土踏まずがつる。
・右ふくらはぎも違和感あり。
評価
・治療後、右下肢が軽くなる。
18回目 7月28日
脾虚肝虚証
・右下肢の自発痛。
・左上肢のしびれ。
24回目 9月8日
腎虚証
・体調良好。
・40分間のウォーキングを開始する。
・左手の第1,2指のしびれ感が強い。
・食道炎、食べ過ぎが原因・
28回目 10月9日
腎虚証
・10月29日にそけいヘルニアの手術。
33回目 11月20日
肝虚証
・白色の便が出た。
評価
・白色の便は胆のう疾患によるものです。
・γGTPの数値が高かったので胆のうに異常があったと思われる。
34回目 11月27日
肝虚証
・通常の便に戻る。
36回目 12月9日
脾虚証
・昨日、昼食後から右上腹部に痛み。
評価
・治療後痛みなし。
43回目 2月3日
脾虚証
・調子よい。
まとめ
X年9月20日からX+2年2月3日(途中、本人の体調不良により7ヶ月間の休止あり)までの治療経過を記しました。
頚椎の靭帯骨化症は難病に指定されている疾患です。
それによる、首・肩・背中の痛みや手のしびれが鍼灸治療で改善しました。
痛みが軽くなったため、その後の整形外科での検査はしていないので骨化した靭帯がどのようになったかは分かりません。
以前、慢性の腰痛で治療していた50代男性の患者さんは腰椎が後ろに出ていました。
ほぼ週に1回、3年ほど治療を続けていたある日以前よりも腰椎が凹んでいるのに気づき患者さんに確認したところ、本人も以前より腰椎が椅子の背もたれに当たる感覚が減っていると仰っていました。
このように、鍼灸治療を長年続けていると常識では考えられないようなことが起きることがあります。
記事の患者さんはそれ以降も定期的に治療を続けた結果、現在は時々軽い首・肩・背中の痛みを訴える程度まで改善しました。
そして、心房細動も改善し、軽い不整脈が残る程度になりました。
現在は月に1度か2度体がだるいと言って来院されています。
今回の症例は、70代男性の頚椎の骨化症による首・肩・背中の痛みの治療の記事でした。