今回は2,010年代に私の実父の大腸がんによる右下腹部痛の臨床例です。
大腸がんと分かるまでの経過はこちらです。↓
- 平成29年2月、上腹部痛で胃腸科を受診。
- 3月、貧血により輸血。
- 8月中旬頃より右下腹部痛を訴える。
- 9月中旬、右下腹部痛が悪化。
- 9月下旬、内視鏡により大腸を検査。
- 10月3日、上行結腸の真ん中より下に癌があると診断。
大腸がんのステージはⅢでリンパ節にも転移している模様でした。
10月3日に診断を受けてから手術日まで1ヶ月ほどあったので、少しでも痛みが緩和されればと思い鍼灸治療をしてみました。
入院するまでの5回の治療の経過を記しました。
鍼灸治療院たけしたブログ 管理人
(はり師:第 140155 号 きゅう師:第 139966 号)
予診票
初診日
2,017年 9月28日
性別・年齢
男性 70歳
主訴
右下腹部痛
現病歴
8月中旬
ペインスケール(痛みの度合い)
記載なし。
病院での診断
大腸がんステージⅢ
その他の症状
下痢と便秘を繰り返す
体温・血圧・血糖値
記載なし。
薬の服用
記載なし。
治療経過
1回目 X年11月28日
脾虚肝実証
はり治療
太陵、太白、行間、中カン、関元、膈兪、肝兪、脾兪、左腎兪、右大腸兪
きゅう治療
膈兪、肝兪、脾兪、左腎兪、右大腸兪
評価
・公孫、内関、関元、左腎兪、右大腸兪、胃の六つ灸を自宅でお灸をするように指示。
2回目 10月5日
脾虚腎虚証
・1週間ぶりに実家に行くと大工仕事をしていた。
・前回よりも少し元気が出てきている。
追加治療
右小腸兪
評価
・記載なし。
3回目 10月12日
肺虚証
・10/10に大腸がんと告知をうけたせいか少し元気がない。
・右腹結にあった硬結は柔らかくなっている。
・最近は腹痛を訴えることもなく、夜中の痛みもない。
・朝起きると散歩をし、食事は普通に摂れている。
評価
・凹んでいた左腎兪が少し盛り上がってきている。
4回目 10月19日
脾虚腎虚証
・記載なし。
評価
・記載なし。
5回目 10月26日(入院当日)
脾虚肝実証
・今日は腹痛あり。
・腹部は膨らみが出て、ツヤが出てきた。
評価
・腹部の痛みは消失。
・午後から一緒に病院に向かう。
まとめ
約1ヶ月、入院するまでの5回の治療を記しました。
1回目の治療のあと、1週間後に実家に行くと大工仕事をしていたのでビックリしました。
3回目の時は、ほとんど腹痛を訴えず、5回目の時はやや腹痛がありましたがこれも治療後ほぼなくなりました。。
病院に入ったときは本当に大腸がんステージⅢの人なのかという感じでした。
10月下旬に手術だったのですが、手術時間は約6時間でした。
手術終了後、切除した部分を先生が見せてくれました。
癌の部分は灰色に近い色で「こんな色になるんだ。」と思わず声がでました。
医師の説明では「退院は約1ヶ月後です。」と言われたのですが予想以上に回復がよく2週間で退院できました。
退院後は2週間おきの抗がん剤治療が6ヶ月続きました。
抗がん剤の副作用で抗がん剤治療のあとの1週間は体がとても辛かったようで、実家にいくと寝込んでいました。
少し体調が良くなった時に鍼灸治療も続けました。
私の父は聴覚障がい者で意思疎通は手話でしかできません。
入院中の病院スタッフとのコミュニケーションが心配でしたが、看護師さんが筆談で要望や体調のことを聞いてくれていたようで父も快適な入院生活を送れたようです。
あれから約6年経ち、仕事はリタイアしましたが、金魚やメダカを育てたり、昔からの趣味である釣りを楽しでいます。
癌の一番辛いのは痛みだそうです。
がんはある程度進むと痛みが発生し、末期には約7割の患者さんが主なる症状として痛みを体験し、その約8割は激痛であると言われています。
また、がん自体が臓器などに浸潤したことによる直接な痛みのほか、手術、放射線治療、化学療法などの治療に伴う痛みや入院生活中におこる筋肉痛や褥瘡なども広い意味でがんの痛みといえます。
鍼灸治療で癌の痛みの治療をしたのは、私の父が初めてでしたが痛みを緩和する効果が得られたのは貴重な経験でした。
今は2人に1人が癌にかかる時代です。
癌による痛み、抗がん剤の副作用などに鍼灸治療は病院などの治療の補完的な役割を担うことが出来ると思っています。
今回は実父の大腸がんによる右下腹部痛の治療の記事でした。