東洋医学からみる肝臓の働きを知りたいですか? 肝臓が不調になる原因、東洋医学ではどのようなタイプで分けるのか、また肝臓が不調になったときの対処法を解説します。
東洋医学からみる肝臓の働きにはどんなものがあるのだろう?肝臓の不調でどんな症状が現れるのだろう?肝臓の不調を改善するツボってあるのかなぁ?
こういった疑問に答えます。
この記事を書いている私の臨床経験は、15年ほど。
鍼灸治療で様々な病気、症状を治療しています。
実際に、私は肝臓の不調で現れる症状を治療して改善しています。
こういった私が、解説していきます。
肝臓の異常によって現れる症状を理解することで、日々の生活で気をつけるポイントや、東洋医学の知恵を取り入れることで病気の改善・予防になります。
3分ちょっとで読めるので、肝臓の働きにはどんなものがあって、肝臓の働きに異常があるときの症状を知りたい方は最後まで読んでみてください。
1、東洋医学における肝臓の働き2つ
最初に東洋医学における肝臓の働きについて解説します。
東洋医学における肝臓の働きには2つあります。
✔最初に知っておくべき基礎知識
②:蔵血作用(ぞうけつさよう)
下記で1つずつ解説します。
疏泄作用(そせつさよう)
まず、最初に東洋医学における肝臓の働き①の「疏泄作用」について解説します。
疏泄作用とは気・血・津液というエネルギーを全身のすみずみまで届け、またそのエネルギーを必要な量、各部分に配り分ける働きのことです。
たとえば木は根から吸い取った栄養分を幹や枝を通して葉までその栄養を届けますよね。そのようなイメージを持ってもらえるといいかもですね。
全身に栄養を届ける働きの事を疏泄作用と言います。
蔵血作用(ぞうけつさよう)
つぎは、東洋医学における肝臓の働き②の「蔵血作用」について解説します。
蔵血作用とは血を必要な量だけ体の中に配り分けたり、血が体の中を周る量を調整したりする働きです。
この蔵血作用により筋肉が良く動き、皮膚や髪がうるおいを保つようになります。
体の中で生成された血を体の各所に配り分けたり、適当な量が周るように調整する働きを蔵血作用といいます。
2、 肝臓の不調、タイプ別3つ
東洋医学からみる肝臓の不調は大きく分けると3つのタイプがあります。
✔肝臓の不調、タイプ別3つ
①:肝虚陽虚
②:肝虚陰虚
③:肝実
それではタイプごとに解説していきますね。
①肝虚陽虚
肝虚陽虚とは肝臓の働きが低下して、そのうえ体を温める働きが低下している状態のことです。
原因としては出産、気ぐろう及び肉体の使い過ぎ、ケガなどです。その他に体質としてこのようなタイプの方もいます。
腰痛を例として説明してみます。肉体労働が多くなりすぎると肝虚の状態になります。肝臓は筋肉の伸び縮みと関係するので、肝虚の状態になると筋肉の伸び縮みが悪くなって腰を動かすと痛みが出るようになります。
肉体の使い過ぎやケガなどにより肝虚になり、更に体を温める働きが低下している状態を肝虚陽虚といいます。
②肝虚陰虚
肝虚陰虚とは肝臓の働きが低下して、陰気と言われる体を引き締める、潤す、冷やすエネルギーが不足している状態のことです。
原因としては肉体労働のやりすぎ、妊娠・出産などです。
偏頭痛を例として説明してみます。陰虚の状態になると冷やす効果が低下して熱が発生します。頭の側面には胆経といわれるエネルギーが流れる通路がありますが、そこに熱がとどまってしまい痛みが発生します。
肝虚陰虚とは肝臓が不調になり陰気というエネルギーが不足している状態の事です。
③肝実
肝実とは肝臓に関する熱や血の流れが滞っている状態です。
原因としてはお酒の飲みすぎ、出産、カゼなどによる発熱、ケガによる内出血、イライラを我慢するなどです。
水溶き片栗粉を例として説明してみましょう。水で溶いた片栗粉は何もしない状態だと混ぜてもサラサラしていますよね。しかし、それに熱を加えるとドロドロになります。
そのように血に熱が加わってドロドロになり流れが悪くなるのを肝実といいます。
3、肝臓の不調で起こる病気
肝臓は筋肉の伸び縮みや泌尿生殖器と深い関わりがあります。あとは目や頭、もちろん肝臓そのものの病気があるので、その辺りを解説します。
✔肝臓の不調で起こる病気
①:筋肉系の病気
②:目の病気
③:頭の病気
④:泌尿生殖器系の病気
⑤:肝臓系の病気
⑥:その他の病気
①:筋肉系の病気
肝臓の働きの異常で臨床上でも一番多い病気は筋肉系です。
これは、動かすときに痛みが出るというのが特徴です。
✔筋肉系の病気の種類
- ギックリ腰
- 腰痛(腰を前後に動かした時)
- 膝痛(歩くときに痛いなど)
- 股関節痛(歩くときに痛いなど)
このように肝臓の不調で起こる筋肉系の病気は動かすときに痛いという特徴があります。
②:目の病気
目は肝臓から栄養を補うところです。肝臓の不調があると目の病気が出やすくなります。
✔目の病気の種類
- 疲れ目
- まぶたのケイレン
- 白内障
- 緑内障
- 麦粒腫
- 逆まつげ
肝臓の不調は目の病気を引き起こしやすくなります。しかし、小学生でもメガネをかけている児童が増えたということは肝臓だけの問題ではなく目の使い過ぎにも問題があるのかも知れません。
③:頭の病気
肝臓の経絡(エネルギーが通る道)は足の親指から頭まで続いています。肝臓の働きに異常があると頭の病気が出やすくなります。
✔頭の病気の種類
- 頭の病気の種類
- 偏頭痛
- 頭が重い
- パーキンソン病
④:泌尿生殖器系の病気
足の親指から始まる肝臓の経絡(エネルギーが通る道)は生殖器と泌尿器を通っています。したがって、肝臓の働きに異常があると泌尿生殖器の病気が出やすくなります。
✔泌尿生殖器系の病気の種類
- 月経不順
- 不妊
- 各種婦人科系の病気
- 更年期障害
- 膀胱炎
- 前立腺肥大
⑤:肝臓系の病気
五臓はそれぞれの働きを助けあったり、抑えあったりしてバランスをとろうとしています。肝臓の病気には肝臓そのものに不調が出て起こる場合と他の臓器から影響を受けて起こる場合があります。
✔肝臓系の病気
- 各種肝炎
- アルコール性肝炎
- 肝硬変
- 肝臓がん
- 脂肪肝
- 胆のう炎
- 胆石症
- 胆道閉塞症
⑥:その他の病気
肝臓の不調があった時は上で書いた病気以外の病気もでる事があります。
✔その他の病気の種類
- 立ちくらみ
- めまい
- 疲れやすい
- 肩こり
- 高血圧
- 動脈硬化
- 胆石症
- 顔面神経麻痺
4、肝臓が不調になったときの対処法2つ
肝臓は沈黙の臓器と言われ、末期にならないと自覚症状が現れない場合があります。そうならないようにあらかじめ対処する必要があります。
✔肝臓の働きが異常になったときの対処法2つ
①:病院で検査をする
②:プロの鍼灸師の施術をうける
ここではその対処法を2つ紹介します。
①:病院で検査をする
主な検査としては血液検査があります。ここでは健康診断で行う検査について解説します。
健康診断で行う肝機能検査には3つあります。
- AST
- ALT
- γ-GTP
この検査は肝細胞の壊れ具合を診る検査で、それぞれ基準値があります。
- AST- 8~38 IU/L
- ALT- 4~43 IU/L
- γ-GTP- 男性:86 U/L以下 女性:48 U/L以下
この検査で基準値以上の数値が出た場合は、再検査または精密検査が必要になります。その場合は医師の指示に従いましょう。
②:プロの鍼灸師の施術を受ける
次はプロの鍼灸師の施術を受けることについて解説します。
東洋医学では肝臓の働きの異常を肝虚タイプ、肝実タイプに分けて施術をしますが、肝虚タイプと肝実タイプでは使うツボが違ってきます。
この肝虚タイプか肝実タイプかを見分けるには、問診、触診、脈診という診断法を使って判別します。
たとえば本当は肝実タイプなのに肝虚タイプと間違って判断して施術を行うと体は良くなる方向には向かって行きません。
肝臓の働きが異常になった場合はプロの鍼灸師に問診、触診、脈診で診断をしてもらい、適切な施術をしてもらいましょう。
まとめ
最後に本記事のまとめを紹介して終わります。
内容をまとめると以下です。
✔東洋医学における肝臓の働き2つ
- ①:疏泄作用(そせつさよう)
- ②:蔵血作用(ぞうけつさよう)
✔肝臓の不調、タイプ別3つ
- ①:肝虚陽虚
- ②:肝虚陰虚
- ③:肝実
✔肝臓の不調で起こる病気
- ①:筋肉系の病気
- ②:目の病気
- ③:頭の病気
- ②:泌尿生殖器系の病気
- ③:肝臓系の病気
✔肝臓の不調になったときの対処法2つ
- ①:病院で検査をする
- ②:プロの鍼灸師の施術をうける
肝臓の働きの異常は筋肉系から肝臓疾患まで病気の幅が広くなります。
最近、腰を動かすと痛い、疲れやすい、目がかすむ、爪が変形している、足がつりやすいなどの症状がある場合は肝臓の働きの異常が考えられます。
その場合、健康診断などで数値に異常がなくても、東洋医学では肝臓の働きの異常と診断します。
東洋医学では未病を治すという言葉がありますが、これは軽い病気の内に治療をして重い病気にならないようにするという考え方です。
肝臓の働きの異常を感じたら、この記事を読んで適切な対処をして頂けると幸いです。
今回の記事は肝臓の働きの異常で起こる不調を東洋医学の視点で解説しました。